【春日若宮おん祭とは】歴史と由来・春日若宮御祭礼絵巻物って何?

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春日若宮おん祭とは何か、その歴史と由来とは、日本の古い歴史に深い関わりがあります。

今回は、春日若宮おん祭の歴史や由来について詳しく解説するとともに、春日若宮おん祭の様子について書かれた「春日若宮御祭礼絵巻物」についてもご紹介します。

 春日若宮おん祭に関してはこちらの記事もどうぞ。

 春日若宮おん祭全体のスケジュール 「春日大社「春日若宮おん祭」の「日程・時間・スケジュール・混雑状況 (人出)や混雑回避・桟敷席の概要」など」

 神事開始7月1日~中心神事前日12月16日のスケジュール・神事内容 「【春日若宮おん祭】7月1日~中心神事前日12月16日「流鏑馬定・縄棟祭・大宿所詣・宵宮詣」などの見どころ・スケジュールと詳しい内容など」

 中心神事12月17日~12月18日のスケジュール・神事内容 「【春日若宮おん祭】12月17日~18日「お渡り式・大名行列・松の下式・御旅所祭」の見どころ・スケジュールと詳しい内容など」

「春日若宮おん祭」とは!? 国指定重要無形民俗文化財

春日若宮おん祭は、古来、「祭り遅いはおん祭」とも呼ばれ、奈良県内で斎行される祭礼としては年間最後の祭です。

国の重要無形民俗文化財に指定されており、それだけ貴重で、しかも質、量ともに、我が国で最高峰と言えるお祭りなのです。

祭の中で上演される芸能演目の中には、今や日本の中で、おん祭でしか見られないというものも存在しています。

「おん祭」とは「お祭り」そのもの

普段、私たちは、神社で行われるお祭りや秋祭り、学園祭といったものも含めて、一般的に「お祭り」という言葉でお祭りを認識しています。「お祭り」は「御祭」であり、すなわち古くは「おんまつり」という言葉でした。

しかし一方で、特に奈良エリアでは、「おんまつり」と言えば「春日若宮おん祭」のことを指すほど、「春日若宮おん祭」はお祭りそのもの、「まさにこれこそがお祭りだ!」と言うべきものなのです。

平安時代末期の姿を今に伝えるまごうことなき「神事」

歴史については詳しく後述しますが、春日若宮おん祭は、平安時代末期に始まったものです。

時代の変遷に伴って、追加された芸能もありますが、神様がお渡りするさまなどは、平安時代と変わらない日本で最も古いお渡りの形となっています。


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春日若宮おん祭の目的は「天下泰平・五穀豊穣・万民和楽」

春日若宮おん祭は、平安時代の末期に、当時の摂関家であった藤原氏、宗教的権力者であった春日社(現在の春日大社)と興福寺によって創始されました。

祭祀を始めた目的は「天下泰平・五穀豊穣・万民和楽」です。

このあたりの歴史は学校の社会科で習った方も多いはずなので、ぜひ思い出してみてください。

春日若宮おん祭・創始時期の時代背景

平安末期といえば、天皇、上皇、摂関家が絡んだ骨肉の争い、僧兵の存在に源平の戦い、武士の台頭……と、日本の歴史の中でも非常に顕著な動乱の時代でした。

権力者の間では、えぐい権力争いが行われていた一方で、平民たちの間では不安が大きくなり、人心も不安定になっていた時代です。さらに天候は長雨、日照時間が少なく、当然作物は不作。洪水も起こったため、飢饉や疫病でかなりの被害を出した記録も残っています。

摂関家、春日社、興福寺としては、盛大にお祭りを行うことによって人心を安定させるとともに、求心力を狙った一石二鳥の一大イベントとして、年末に息災を願う名目で春日若宮おん祭を執り行うこととしたのでしょう。

春日若宮おん祭の歴史と由来!

春日若宮おん祭が初めて行われたのは、1136年(保延2年)のことです。儀式が始まったのは9月17日であったと伝えられています。その前年、1135年に、春日大社の中に新しく若宮社がお祀りされました。現在の若宮神社です。その結果として、1136年に新しいお祭りが始まったという位置づけです。

お祭りでは、御幣という神様への捧げ物が捧げられます。春日若宮おん祭では、主催こそ春日社でしたが、

  • 日使(ひのつかい)
  • 藤原氏(関白家)氏長者
    ※創始当時は藤原忠通
  • 興福寺

といったそうそうたるメンバーから御幣が捧げられ、その様子は天皇家によって行われる祭祀「勅祭(ちょくさい)」に匹敵する規模でした。

日使の御幣は関白家の御幣よりも上位に掲げられたため、天皇の御幣と同一視する向きも実際にありました。春日社や興福寺では、日使の御幣=天皇家の御幣なのか否か、何度か論争になったこともあったようです。

「日使」とは?

「日使(ひのつかい)」とは、関白の代理として若宮の神様に御幣を捧げる役です。

春日若宮おん祭で行われる、「お渡り式」という行列で先頭を飾る重要なお役目を持っています。上の写真では右側の黒衣の人が日使で、後ろに従う2人の楽人は随従にあたります。

元々、春日若宮おん祭には関白忠通が先頭を切って参上していたのですが、あるとき、関白が急病のため、おん祭に参加できなくなってしまったことがあった。その時、関白が自分の代理として、日使を立ててお参りをしたため、その後日使というお役目が定着した……と伝えられています。

本当は勅祭になりたかった春日若宮おん祭

春日若宮おん祭は、関白藤原家が後ろ盾となり、興福寺(当時の春日興福寺)主体のお祭りとして開催されましたが、実際には「天皇のご威光をいただいた勅祭」に進化させたい、という心づもりもあったようです。

春日若宮おん祭のお参り行列で先頭に立つ「日使(ひのつかい)」は、元々の由来を紐解けば「関白忠通のお使い」ですが、その後、日使の御幣はおん祭に残され、関白の御幣よりも先立って神に捧げられました。つまり、春日若宮おん祭においては、関白の御幣よりも上位の御幣が存在したのです。

関白よりも上位といえば、平安時代の日本では天皇その人より他にありえません。

関白としては、民衆からの求心力をつけるため、日使=天皇からのお使いと解釈させ、春日若宮おん祭を勅祭にグレードアップさせたいという思惑がありました。

ただ、時代が公家、武家双方を巻き込んだ権力争いの混乱期にあったことから、日使=天皇家の使い、という構図が天皇家に承認されることはなく、江戸時代には、

日使=関白のお使い

ということで決着が付きました。


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明治維新までは興福寺主体のお祭り

明治維新までは、春日若宮おん祭の運営主体は興福寺でした。神仏習合の影響で興福寺と春日大社はほぼ同一の運営がなされていたためです。

これは、平安時代から続いた風習で、平安時代に春日若宮おん祭が創始された当時は、既に興福寺と春日大社の間には密接な関係がありました。興福寺と春日大社とで、膨大な数の僧兵を擁していましたし、奈良エリアでは「春日興福寺」として絶大な権力があったのです。

春日若宮おん祭は天下泰平を祈るものであると同時に、摂関家と興福寺が絶大な権力を世に示すためのものでもありました。

しかし、明治維新では神仏習合が解かれ、神仏分離が行われました。これを期に春日若宮おん祭の主体は春日大社となり、興福寺は運営主体から徐々に遠ざかることとなります。

戦乱に巻き込まれず祭の形式が残る

春日若宮おん祭の歴史といっても、実際には春日若宮おん祭は、創始された後は大きく変遷することなく、現在まで受け継がれてきました。

これは、奈良という場所に1つの秘密があります。平安時代以降、天皇の御座所としてえてして戦乱の地となった京都とは離れていたため、大きな戦乱に巻き込まれることなく祭の形式をそのまま残すことができたのです。

春日若宮おん祭の見どころの1つ、「芸能」には、江戸時代に追加されたものがいくつかあります。また時代の変遷に伴って一度、行わなくなったものあります(7月1日の「流鏑馬定」)。明治期までは主催者扱いだった興福寺も、今は春日大社が主催となることで運営に携わるのは一部のみとなっています。

ところが、その「流鏑馬定」も昭和期に復活を遂げました。

今やタイムスリップ、タイムカプセルと呼ばれるほど、平安時代末期に行われた日本の神事、ほぼそのままであると言って良いでしょう。

春日若宮御祭礼絵巻物って何?

「春日若宮御祭礼絵巻物」は、春日大社が所蔵する江戸時代の絵巻物です。

ときおり、春日若宮おん祭のスケジュールに合わせたり、あるいは春日大社の秘宝展のようなものが行われる際に、奈良国立博物館等で公開されています。

奈良国立博物館「おん祭と春日信仰の美術」の2018年スケジュール

奈良国立博物館の「おん祭と春日信仰の美術」展は毎年開かれており、ここで「春日若宮御祭礼絵巻物」も毎年展示されています。

2018年のスケジュールは以下のとおりです。

  • 2018年12月11日~2019年1月20日

「おん祭と春日信仰の美術」は、奈良国立博物館の特別展です。特別展は通常の入館料以外の入場料がかかります。詳細は奈良国立博物館ホームページにてご確認ください。

春日若宮おん祭の詳しいスケジュールはここでチェック!

春日若宮おん祭について、実際に見に行こうという方は、日程や祭礼の内容、詳しいスケジュールをぜひチェックしてから、お伺いしてください。

春日若宮おん祭は奈良市街地全体を巻き込む大規模なお祭りですので、「いつ、どこで、何が行われるのか」を把握していないと、見どころを見逃してしまうかもしれませんよ!

 春日若宮おん祭スケジュールに関してはこちらの記事をどうぞ。

 春日若宮おん祭全体のスケジュール 「春日大社「春日若宮おん祭」の「日程・時間・スケジュール・混雑状況 (人出)や混雑回避・桟敷席の概要」など」

 神事開始7月1日~中心神事前日12月16日のスケジュール・神事内容 「【春日若宮おん祭】7月1日~中心神事前日12月16日「流鏑馬定・縄棟祭・大宿所詣・宵宮詣」などの見どころ・スケジュールと詳しい内容など」

 中心神事12月17日~12月18日のスケジュール・神事内容 「【春日若宮おん祭】12月17日~18日「お渡り式・大名行列・松の下式・御旅所祭」の見どころ・スケジュールと詳しい内容など」

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