「若宮社」…春日若宮おん祭の神様「若宮さま」とは!
春日大社の境内社の1つに、若宮社(若宮神社)があります。
日本における祭そのものとも言われる「春日若宮おん祭」で祭神となるのは、春日大社でお祀りされる春日大神ではなく、若宮神社にお祀りされている若宮様です。
しかしそれでは、若宮様とは何なのか。そして、若宮神社とは? そんな疑問に迫ります。
若宮神社
- 創建年:1135年
- 祀られている御祭神:天押雲根命(あめのおし くも ねのみこと)
- ご利益(御神徳):知恵と生命の神様
- 造営発願者:藤原忠実
若宮神社の歴史
若宮神社は、ご神託によって創建された神社です。
若宮社創建より前、1041年(長久2年)に、春日大社ではかなり大きなトラブルがありました。
春日大神が6歳の童子に乗り移り神託を下していわく、
「春日の神は、供物であった神饌(神の食事)を受け入れない」
つまり、春日の神はもうこれ以上、日本を保護することをやめる! という意味のことを仰られたので、春日大社は上を下への大騒ぎになりました。
救いだったのは、神託の中に「なぜ供物を受け入れないのか」という理由が添えられていたことで、いわく、
「新しく誕生した神子に供物が捧げられていないから」
ということだったのです。
新しく誕生した神とは?
そもそも、1003年(長保5年)に春日大社ご本殿の床に、3升ほどの水の塊があらわれ、その中から神があらわれて、春日大社の第四殿に入った……と記録があります。
そして、その神様に供物を捧げていなかったため、40年ほど経過した後になって、神様からダメ出しが来たというわけです。
そういうわけで、1041年以降は春日大社の神殿内で、新しい神様(=若宮様)に向けていっしんにお祀りが続けられました。
若宮神社創建は1135年(長承4年)!
1132年、長承年間に入りますと、疫病、飢饉が全国的に流行しました。
そこで、当時すでに関白を引退していた、藤原忠実(ふじわらのただざね)が、若宮御殿……つまり若宮社の建設を命じます。
若宮様のご加護をもって、疫病、悪天候、飢饉といった自然災害を防ごうと考えたのは、当時の考え方としては至極まっとうと言うことができるでしょう。
そこで春日大社では7日に及ぶ祈願が行われ、選定の結果、境内の、現在の若宮本殿のある場所に、神殿の幻影とその神殿に奉職する神職たちの幻影が現れたと伝えられています。
結果として1135年に、現在の場所に若宮神社が創建され、2月27日に春日大社の本殿から御遷座されました。
春日若宮おん祭の誕生
御遷座された当日中に鳥羽上皇が行幸される運びとなり、以下、関白・藤原忠通公ならびにその父である前太政大臣・藤原忠実公をはじめとした臣下もこれに随従し、大行列を伴う形で若宮様御遷座を祝うために下向されます。
そして、その翌年となる1136年(保延2年)に、疫病や飢饉を鎮め、天下泰平、五穀豊穣、万民和楽、四海安穏を祈願して、今日まで900年間も継続される例大祭・「春日若宮おん祭」が開始されたのです。
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されど現在の建築は1863年の造替で建て替えられたもの!
以上、平安時代に建築された若宮神社ですが、現在見ることのできる殿舎の姿は1863年(文久3年/江戸後期)の式年造替された時の姿です。
しかしながら、春日造という列記とした由緒正しき、平安期造営の建物の特徴を伝えることから、国の重要文化財の指定を受けています。
この春日造は春日大社独自の造りですが、全国の春日大社の御祭神が御霊分けされた社でも見られる造りであり、ほぼ必ずと言って良いほど春日造が用いられています。
2021年(令和3年)4月!はじめて御本殿・内院の特別一般公開が実施される!
春日大社では、令和3年4月に20年の1度の「若宮神社御造替」によって若宮社の殿舎の造り替えが実施されます。
上記の通り、現在の若宮社の社殿は1863年(文久3年)の式年造替で建て替えられたものであり、老朽化・腐朽化という観点から見てもそろそろ建て替えの頃合いです。
そこで2021年4月に若宮社に鎮座される若宮様が一旦、仮殿(仮に建てた殿舎)へとお移りになられ、主人のいない空になった若宮社(若宮神社)の御本殿・内院が特別に一般公開されます。
見学できる場所
参拝者は神職の先導により、瑞垣に囲まれた内院に入り、春日造の御本殿を間近に拝観ができます。
この内院は瑞垣に囲まれた場所にあり、通常は神職のみ入ることが許さる神域です。今回、若宮様が春日大社のご本殿へ遷座(移動)されることから特別に俗人が神域に足を踏み入れることが許されます。
若宮神社御本殿が公開されるに至った経緯
今回のこのような取り組みは若宮社をはじめとした、春日大社のことを広く世間に見知っていただくための企画となるようです。
春日大社もはじめての企画ということで鼻毛がすべてスっとんじまぅほどに鼻息荒げに掲げる企画になるようです。
◎特別公開期間:2021年(令和3年)5月23日(日)~6月6日(日)
◎実施時刻:10時~、11時~、13時~、14時~の1日4回実施
◎見学所要時間:約30分
◎受付場所:若宮神社前特設テント
◎見学料金(若宮御造替奉賛金として):1人2000円(特別記念品付)
◎申し込み方法:各回先着20名まで
◎予約方法:当日、参拝された方の中から先着順。事前予約は不可。
◎見学の流れ:全員お祓いをお受けした後、神職などが案内
◎公開中止条件:雨天決行。ほか特になし
若宮神社に奉斎されている神様「天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)」とは?
天押雲根命は春日大社本殿にて奉斎される第三殿の天児屋根命と、第四殿の比売神との御子神です。通称「若宮」。
別名を天押雲命、天村雲命(あめのむらくものみこと)[1][2]、天二上命(あめのふたかみのみこと)[3]、後小橋命(のちおばせのみこと)[4]と伝える。
御神徳(ご利益)は、「水徳と知恵と生命」の神様です。
元来、若宮様は春日大社本殿にて奉斎される神だったのですが、時代を下る過程において単独で若宮神社に奉斎される運びとなり、春日大社では本殿と同格の位置付けの尊い神社とされています。
若宮様は奈良の神、水の神
春日大社のご本殿に祀られているのは、春日大神様と仰います。
具体的にご本殿に祀られるのは次の4柱の神様です。
- 武甕槌命(タケミカヅチノミコト)
- 経津主命(フツヌシノカミ)
- 天児屋根命(アメノコヤネノミコト)
- 比売神 (ヒメガミ)
これらの神はいずれも、日本神話を出自とする神様です。中でも第四殿に祀られる比売神については、天照大神(アマテラスオオミカミ)と同一視されています。
これらの神々とは違い、若宮神社の若宮様は、奈良で生まれた奈良の神様として、とても大切にされています。
また、さきほど若宮様の出自についてご紹介しましたが、若宮様は水から生まれた神として、水の性質を持っています。
若宮様=水の神、その真相は……
若宮の神が水の神であることには深い意味があります。
若宮神社が創建された時、日本は飢饉にあえぎ、流行する疫病に疲弊していました。
これらの社会問題を解決するカギが「水」です。
飢饉や疫病といった社会問題は、主に治水がうまくいかないことによって起こります。水が不足すれば旱魃(かんばつ)から飢饉が起こり、湿気が多すぎれば疫病が起こり、洪水になればまた飢饉となります。
順調に豊作を得られ、むやみに病が発生しないためには、ちょうどいい降水量がどうしても必要です。
雨量の調節を司るのは水の神です。若宮の神が水から生まれたとされる伝説は、水の神を求める当時の信仰にぴったりとマッチしているといえます。
ところが、春日大社に元々祀られていた4柱の神様のうち、水の神は1柱もいないことになります。
そこで、新たに水の神の存在を奉ることとなったのが、若宮神社の存在意義なのでしょう。
なお、若宮神社の大祭とも言える「春日若宮おん祭」では、お渡り式において、馬長児(ばちょうのちご)が先導する「恋笹(こいざさ)」、馬長児の従者が頭に掲げる竜神の飾り、従者が腰にさげる一本足の下駄など、水神や雨乞いにまつわる小物が様々に登場します。
春日若宮おん祭を見に行くにしても、若宮様が水の神であるということ、春日若宮おん祭の全体が順調な雨水の恵みを水神に願うものであったということを念頭に置いておくと、祭の意義をより明らかに感じ取ることができるでしょう。
高天原より天津水を皇孫に献じたとも
「系譜綜覧(昭和11年)」に編纂されたの「荒木田氏系図」の項によると、皇孫・火瓊々杵尊(ニニギノミコト)の御代(御宇)に誕生した神だとされています。
※注釈※=荒木田氏は伊勢皇大神宮(
京都府南丹市園部に建つ、摩氣神社(まけじんじゃ)の伝承によれば、この神は高天原より天津水を持って降臨し、皇孫に献じたとあります。
若宮神社の見どころ
若宮紅梅
この紅梅は1581年(天正9年)のこと、長谷寺(大和)にある紀貫之の「人はいさ」と呼ばれる名紅梅の穂木から接ぎ木した梅の木を、春日の篤信家・米屋宗慶が若宮社の社頭に献木したものです。
太平洋戦争後の大風で倒壊し申したが、根元から生えた萌芽が成長し、これまで以上に美しい紅梅を咲かせていまする。
『人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける』 紀貫之
若宮神社の御朱印について
この若宮神社では御朱印を授与されています。ただし、授与されている場所は付近に位置する「夫婦大国社」になります。
御朱印以外にも「若宮十五社めぐり」なる御朱印めぐりも存在します。
以上のページで詳しく報じておりますので、あわせてご確認ください!
若宮神社へ参拝できる時間
- 参拝時間:24時間参拝可能
- 定休日:なし(年中無休)
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