神社の建て替え(リニューアル)には、「式年造替」と「式年遷宮」とがあります。
春日大社で使われる用語は「式年造替」であるのに対して、例えば伊勢神宮で行われている建て替えは「式年遷宮」と呼ばれています。
「式年造替」と「式年遷宮」は違いがあるのでしょうか。
そして、どう違うのでしょうか? 今回は、この2つの違いを解説します。
式年造替とは?読み方は?何をするの?
「式年造替」とは、「しきねんぞうたい」と読みます。
「式年」とは、「決められた年」ということ。「造替」は「造り替えること」を指していますので、「式年造替」は、「決められた年に(社殿を)造り替えること」を意味する言葉です。
ここでポイントとなるのは、社殿の造り替えにあたって引っ越しが行われるのかどうか、ということです。
式年造替の場合、社殿の場所は変わりません。
春日大社の式年造替を例に取ると、春日大社では20年に1度、式年造替が行われます。
式年造替では、社殿の檜皮葺(ひわだぶき)屋根が葺き替えられ、社殿の本朱が鮮やかに塗り替えられて、ご本殿は全く新しい建物のように見違えます。ただし春日大社のご本殿は国宝であり、建て替えることができませんから、すべて壊して建て直すというようなことではなく、あくまでもリニューアルです。
ただ建物が新品同様になるだけではなく、御殿の中の調度品なども新しいモノと取り替えられます。
そしてこのリニューアルの間、ご本殿の神様におかれましては、作業のためご本殿に居られない期間が生じます。その時は「仮殿遷座祭(かりでんせんざさい)」を行って神様に仮殿にお遷りいただき、式年造替の作業終了後に、正遷宮のお祭によってご本殿にお戻りになられます。
この間、あくまでもご本殿の場所は遷移することがなく、同じ場所での式年造替となります。
式年遷宮とは?読み方は?何をするの?
「式年遷宮」とは、「しきねんせんぐう」と読みます。
さきほど、式年造替でお話したとおり、「式年」とは、「決められた年」ということです。
いっぽう、「遷宮」は「お宮を遷す(うつす)こと」を指していますので、「式年遷宮」は、「決められた年に(社殿を)お遷しすること」を意味する言葉です。
伊勢神宮を例に取りますと、伊勢神宮の式年遷宮は20年に1度です。20年に1度の頻度で、社殿の遷宮、すなわち場所の移動が行われます。社殿は旧社殿とは違う場所に新築され、神様におかれましては、「遷御(せんぎょ)」の儀式とともに新しい社殿にお遷りいただきます。
式年造替と式年遷宮の違いは「ご本殿が移動するかしないか」
これまで見てきたように、式年造替と式年遷宮との最大の違いは、ご本殿の移動があるか、ないかという点に尽きます。
式年造替であっても、神様に仮宮へとお遷りいただく期間があり、神様に移動していただく儀式等は行われます。しかし神様が移動されている間に本宮のリニューアルを終え、神様には元の場所の本宮にお戻りいただくのが、式年造替です。
これに対して、式年遷宮の場合はご本殿の場所そのものが変わることとなります。
伊勢神宮の場合は、式年遷宮のために、遷宮をする場所をあらかじめ確保してあります。これを「新御敷地(しんみしきち)」と呼んでいます。新御敷地は現在ある社殿の隣の土地にあたり、社殿が現在の場所に移転する前に存在していた場所ですから、式年遷宮から6カ月ほどの間は「古殿地(こでんち)」と呼ばれることもあります。
式年造替/式年遷宮が20年ごとに行われるのはなぜ?
春日大社の式年造替も伊勢神宮の式年遷宮も、「式年」つまり決められた年数は「20年」となっています。これは偶然の一致……というわけではなく、神社の式年造替、あるいは式年遷宮には「20年がちょうどいい」と言われるワケがあります。
その理由は、まず20年ほど経つと、社殿の見た目が古びてくるからです。日本の神様には、新しいほど若々しい力を発揮していただける、という信仰があります。
すなわち古びた社殿は、もちろん文化財としての価値はありますが、神様のご神徳を最も輝けるものにするためには不十分である、と考えられているのです。そこで屋根の檜皮(ひわだ)や、春日大社の場合には社殿の丹(朱色)が色あせてくる20年というタイミングをもって式年造替が行われています。
またもう1つ、技術継承という理由もあります。社殿を新築するための技術と知識を継承しなくてはなりませんが、あまりに間が空いてしまうとその技術を身を以て知っている人が、直接後継者に教えることができなくなってしまいます。これをうまく継承するためには、20年という感覚がやはり相応しい、これ以上空いてしまうと技術継承の確実性が落ちるためでもあると言われています。
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