春日大社・榎本神社(春日大社 摂社)
読み方
えのもとじんじゃ
建築年
不明
建築様式(造り)
春日造
ご祭神
- 猿田彦大神(サルタヒコノオオカミ)
- ※室町時代以前は巨勢姫明神(コセヒメミョウジン)であるとされる
ご例祭
11月1日
春日大社創建前の地主神を祀る神社
榎本神社は、春日大社が創建する前からこの場所に存在していたと伝えられています。
創建年は不明ですが、榎本神社に関する最も古い記録は、927年(延長5年)に編纂された『延喜式神名帳(えんぎしき じんみょうちょう)』で、ここには榎本神社の元々の祭神が猿田彦神ではなく、春日神(かすがのかみ)、つまり春日野に元々棲み着いていた土地神であると記されています。
その後の文献では、祭神について巨勢姫明神(こせひめみょうじん)であるとされていましたが、巨勢姫という神については日本民俗学でも詳しいことがわかっていません。
時代の変遷に伴い、神が統合されるに従って、猿田彦神と同一視されるようになった神ではありますが、元々は春日氏の氏神として猿田彦とは別の神であった、とする説が濃厚です。
いずれにしても、春日の地に春日大社より前から鎮座していた土地神として、榎本神社そのものはひっそりとしていながらも、春日大社本殿にほど近い、南門のすぐそばに祀られています。
榎本神社の御利益
榎本神社は、後世に庚申信仰と結びつき、奈良の人びとの手厚い信仰を受けた神社です。
庚申信仰とは、仏教、密教、道教とのつながりが深い魔除け信仰の1つです。
「庚申」とは、十干十二支で言う「かのえさる」に当たります。庚申の日は徹夜をして神仏信仰を行い、厄払いをして長寿を願う……といった信仰です。
庚申は「かのえさる」ですので、「さる」からつなげて猿田彦神信仰と結びつきました。
このため、猿田彦神をお祀りする榎本神社は、長寿健康の神として人気となり、春日大社の禰宜とは別に、榎本神社の禰宜が置かれた時代もあったようです。
榎本神社の神様は耳が遠い?春日大社が超広くなったのは榎本神社のせい!?
榎本神社には、春日大社の面積にまつわる面白い逸話が残されています。
過去、春日大社の敷地はすべて榎本神社の神様のものであった。
そこへ、春日大社の神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が訪問してきて、
「この土地の、地下三尺を譲っていただきたい」
と申し出たところ、榎本神社の神は耳が悪く、三尺を面積のことだと勘違いした。
榎本神社の神はOKの返事をしたところ、武甕槌は「春日山全部の、地下3尺まで」丸ごと自分のものにしてしまった。
そこで、榎本神社の神は丸ごと土地を春日大社の神に譲ることになり、仕方なく場所をちょっと借りて社とした。
春日大社は広く、榎本神社は狭くなった――
という逸話です。
他に、この由来に端を発し、「春日杉は地下3尺以上は根を張らない」もしくは「ご造替の折、この榎本神社へ敬意を払って、一番最初に造替を執り行なう」などといった俗説も残されているようです。
3尺というのは0.9mのことですから、要は春日大社の神としては、榎本神社の敷地全部、地下0.9mまで分けてもらえないかな、とお願いしたところ、榎本神社の神は3尺平方、つまり0.8平方メートルほどの面積のことかと勘違いし、快諾してしまったので、結果すべて春日大社の敷地にされてしまった……というような解釈になるでしょう。
それもこれも、榎本神社の神様の耳が良くないせいであると言われ、今でも榎本神社では柱を強く叩き、大きな音を出して、祠の周囲を回りながら祈願する風習が残されています。
御田植神事を見るなら榎本神社前で
春日大社の行事の1つ、御田植神事(おたうえしんじ)を見るなら、榎本神社前がその会場の1つとなります。
御田植神事は、田植えを模した舞踊を田主、神楽男、八乙女たちが踊り、奉納するものですが、その場所は
- 林檎の庭
- 榎本神社前
- 若宮神社前
の3箇所です。
えぇっ?!春日大社の正式参拝はこの榎本神社からスタート
榎本神社の神は古来、耳が遠いことから、参拝者が訪れた際、自らの社殿を叩いて参拝者が来たことを春日の大神へ知らせるとの言い伝えが残されています。
春日大社へ参拝された際は、ダマされたと思って、ぜひ!本殿を詣でる前にこの榎本神社へ詣でてから本殿を詣でても良いかも知れません。ウフ
榎本神社の場所
榎本神社は、春日大社のご本殿から最も近い摂社であるとも言えます。正確には春日大社の回廊のすぐ南側に位置しており、「着到殿」横の道から榎本神社の正面に出ることができます。
榎本神社は、春日大社そのものより前から祀られていた土地神であり、地元の人から長い間崇敬を受けていた神社ですので、春日大社ご参拝の折にはぜひ立ち寄ってみてください。
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