春日大社・紀伊神社:春日大社 摂社
読み方
きいじんじゃ
別名
木宮社
木御社
※上、いずれも古文書の表記として。
奥の院(近世の呼び名)
建築年
不明
※平安時代末期『長承注進状』に紀伊神社についての記載があるため、平安時代末期以前と推定される。長承(ちょうしょう)年間は平安末期、西暦1132年~1134年。
建築様式(造り)
春日造
ご祭神
- 五十猛命(いたけるのみこと)
- 大屋津姫命(おおやつひめのみこと)
- 抓津姫命(つまつひめのみこと)
ご例祭
9月15日
紀伊神社は樹木崇拝を体現する神社
紀伊神社の別名として、木宮社、あるいは木御社と古文書に書かれることがあるとおり、紀伊神社は「木」にご縁のある神社です。
名称が「紀伊」ですから、紀伊地方(紀伊国や紀伊半島、現在の和歌山県一帯)と関連が深いのではないかと想像できますが、実はそればかりではなく、「木の宮(きのみや)」が転じて「きいのみや」となり、「紀伊」の文字が当てられたという側面があります。
そもそも「紀伊国」自体が、古くは「木の国」と呼ばれた土地でした。古代から林業が盛んで、木を崇めると同時に利用することを知っていた地域だったのです。「紀伊」と「木」とは深いつながりがあります。
余談ですが、春日大社の紀伊神社は摂社としての存在ですが、この他に全国で比較的知名度の高い紀伊神社に、神奈川県小田原にある「早川紀伊神社」があります。この早川紀伊神社もまた、古くは「木宮大権現」、その後「紀伊宮大権現」と称され、後に「紀伊神社」と定着したということがわかっています。このことからも紀伊神社の「きい」は元々「き」つまり「木」であったことがわかります。
話を戻し、春日大社摂社であるところの当該「紀伊神社」も、平安時代から樹木崇拝を担ったお社でした。特に春日大社では、創建以来、神の森である御蓋山、春日山、そこに生息する樹木への信仰もあつかったことから、紀伊神社は春日大社摂社の中でも非常に重要な地位を占めていたと言えます。
木が枯れたときは紀伊神社で奉納舞楽が行われた
春日山や御蓋山では、平安時代の初期から、狩猟と伐採の禁令が朝廷により出されていました。神様の森をお守りするため、人の手を入れないよう配慮されていたのです。この命令は太政官符(だいじょうかんぷ)で、太政官から正式に発令されたものであることがわかっています。
さらに、春日山、御蓋山の樹木がたくさん枯れたりすると、これは神の怒りである、あるいは神が天へと去っていってしまう前兆である、という考え方もなされました。
そこで、樹木が枯れた際には紀伊神社において、神の怒りを鎮めるための祭礼が行われました。七日七晩のあいだ、舞楽を奏上して神様をなだめたのですが、この時も、宮仕えの楽人が赴き祭礼に参加したことが記録されています。
紀伊神社のご祭神は紀伊国に樹木の種をもたらした神様
紀伊神社のご祭神は3柱いらっしゃいますが、このうち主祭神五の五十猛命(いたけるのみこと)に関しては、須佐之男命(すさのおのみこと)の実子であると伝えられています。「いそたけるのみこと」と読まれることもあります。
五十猛命は、大八洲(おおやしま。日本の国土のこと)に樹木を植樹した神であり、特に紀伊国に樹木の種をもたらしたという点で信仰があつい神様です。
紀伊神社の御利益
紀伊神社の御利益としては、これまでにも上述してきたとおり、木の神様、林業の守り神としての性格が大きいでしょう。林業従事者からは現在も信仰を集めています。
また航海安全、大漁、商売繁盛、厄除けといったものも紀伊神社の御利益として挙げることができます。
紀伊神社は若宮十五社めぐりの第11番納札社
紀伊神社は、春日大社で行われる巡礼プログラムの1つ「若宮十五社めぐり」の、第11番納札社に指定されています。
若宮十五社めぐりを行うと、該当する15の摂社末社において特別な御朱印をいただくことができます。上の写真では、最も左上の御朱印が紀伊神社のものです。
紀伊神社の場所
画像は春日大社HPより
上の「若宮十五社めぐり」の地図では、11番が紀伊神社です。
紀伊神社は、春日大社ご本殿から見てもやや距離があり、若宮神社周辺の摂社群の中では最も奥まった場所にあります。
紀伊神社は、春日大社のご本殿から徒歩およそ5分の距離にあります。しかし、紀伊神社の周辺には若宮十五社めぐりの摂社、末社がいくつも存在していますので、参拝しながら紀伊神社に訪れることを考えると時間に余裕を持って訪れるのがおすすめです。
紀伊神社へ参拝できる時間
- 参拝時間:24時間参拝可能
- 定休日:なし(年中無休)
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